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1月 写経資料

 今回は御開帳を前に十一面観音さまについて解説させていただきました!

 

十一面観世音菩薩とは

 

猿島阪東観音開帳 第十番札所 遍照寺

 

遍照寺で御開帳される仏様は十一面観世音菩薩という仏様です。十一面観世音菩薩は観世音菩薩の変化した姿とされています。

天台宗では、地獄道に聖観音、餓鬼道に千手観音、畜生道に馬頭観音、修羅道に十一面観音、人間道に不空羂索観音(准胝観音)、天道に如意輪観音を配し六観音とし、それぞれの観音菩薩がそれぞれの六道の世界を救うとされています。

奈良時代から平安時代にかけて、インドの土着の神様の影響がみられる、十一面観音や千手観音などの多面多臂ためんたひ(仏像や神像において、複数の顔と腕を持つこと)の仏様が密教経典とともに日本に伝えられ信仰されるようになりました。

 多面多臂の仏様はその教理の多面性を表しているという点ではインドの神々とも共通しています。ただ、外見に関してはヒンドゥーのブラフマー神やシヴァ神などと比べると、日本の千手観音・十一面観音などは日本の美的感覚が大きく影響しており、同じ多面多臂の神仏であっても大きく印象が異なります。どちらの形状が優れているというものではなく、当時の「救い」の姿が具現化されたものと捉えるべきでしょう。

十一面観音菩薩の十一の顔の意味についてみていきましょう。

前三面 菩薩面ぼさつめん:穏やかな表情

→佇まいで善良な衆生に楽を施す、慈悲の表情

左三面 忿怒面ふんぬめん:怒りの表情

→眉を吊り上げ口を「へ」の字に結び

邪悪な衆生を戒めて仏道へと向かわせる

右三面 狗牙上出面くげじょうしつめん:厳しい表情

→結んだ唇の間から牙を現し、行いの浄らかな

衆生を励まして仏道を勧める
後一面 大笑面だいしょうめん:爆笑の表情

→悪への怒りが極まるあまり、悪にまみれた

衆生の悪行を大口を開けて笑い滅する

頭上 仏面ぶつめん:仏像においてはその仏様の

本地(ルーツ)を表すことが多い

*観音菩薩像の頭上には阿弥陀如来像が置かれていることがありますが、この阿弥陀如来像を化仏といいます。これは、観音菩薩の根本的な仏である阿弥陀如来を表しています。

一般的な意義で解説しています。実際には、千手観音の手が千より少ないこともあるように、十一面より少ない面の十一面観世音菩薩像もあります。その場合は実際の数というよりも教義の象徴を簡略化することでより親しみやすい姿となっていると考えられます。遍照寺の十一面観世音菩薩はどのようなお姿かどうかをより注意深く拝観することで、私たちの中に菩薩の教えを更に深く感ずることが出来るかもしれません。

次に功徳についてみていきましょう。

十一面観自在菩薩心密言念誦儀軌経によれば、十種類の現世での利益(十種勝利)と四種類の来世での果報(四種功徳)をもたらすとされます。

十種勝利 現在の功徳 

    離諸疾病(病気にかからない)

    一切如來攝受(一切の如来に受け入れられる)

    任運獲得金銀財寶諸穀麥等

(金銀財宝や食物などに不自由しない)

    一切怨敵不能沮壞

(一切の怨敵から害を受けない)

    國王王子在於王宮先言慰問

(国王や王子が王宮で慰労してくれる)

    不被毒藥蠱毒。寒熱等病皆不著身

(毒薬や虫の毒に当たらず、悪寒や発熱等の病状がひどく出ない。)

    一切刀杖所不能害

(一切の凶器によって害を受けない)

    水不能溺(溺死しない)

    火不能燒(焼死しない)

    不非命中夭(不慮の事故で死なない)

四種功德 来世での功徳

    臨命終時得見如來(臨終の際に如来とまみえる)

    不生於惡趣

悪趣、すなわち地獄・餓鬼・畜生に生まれ変わらない)

    不非命終(早死にしない)

    從此世界得生極樂國土

(今生のあとに極楽浄土に生まれ変わる)

 

 仏教の力で様々な障害を乗り越えていきたいという衆生の願いに寄り添う存在であることが伺えます。